金 子 兜 太

                                     
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 『旅の途中』 

 
時広 智里

 
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        句集  『旅の途中』   時広 智里

  略  歴
  大正十五年九月   宮崎県佐渡原市に生まれる
  昭和十八年      宮崎県立富商実業学校卒業
  昭和十八年三月   細島尋常高等小学校勤務
  昭和十九年      宮崎県立師範学校で初等科訓導取得
  昭和二十一年     父戦死の報を受く
  昭和二十四年     時広俊輔と結婚 三児を得る
  昭和二十八年     宇部市で起業
  平成二年        夫・俊輔死去。長男健次と事業継続。現在は健次に譲る
  平成三年        西野理郎主宰藤山句会で俳句をはじめる
  平成七年        山口県現代俳句特選
  平成八年        宇部市長賞
  平成九年        アジア文化国際交流会入選
  平成十年        第十六回中国地区現代俳句大会賞
                KRYテレビ「川」コンクール秋のグランプリ
                海超同人、吟遊同人、現代俳句協会々員





      序に代えて      金子兜太

            北国の火種の一つをもち帰る    智里

      著書と出会ったのは中国を旅したときで、ずいぶん以前のことになるのだが
     
     あのときの大陸の雰囲気がいまでもこの人にはある。人柄がおおまかで、芯
    
     が熱い。俳句も他人の影響を受ける度合いが少なく、自分のスタイルがとっく

     にできているような印象がある。

      「北国の火種」と読んで直ちに、これがこの人の芯だと受け取ったのもそのため

     で、北国は北の大陸である。夫君と死別して長くなるが家業を守っての暮しぶり

     も俳句も、やはりおおまかでしっかりしている。とっくに句集を編んでよかったのだ。

   




        創める 

        華 十 句

        蛙鳴く上り列車に乗りにけり


        黄落は母の膝よりはじまりぬ

   この川を神と思いし曼珠沙華


         北国の火種を一つもち帰る


         青山河前も後も抱かれけり


         木喰佛抱けば一瞬酢のかおり


         黒潮も私も仲間葱坊主


         永遠の友情の碑青島の夏


         銅鑼遠く大根ぐつぐつ火は赤い


         小國は火の國なりき大根干す


         大山は神なり霧になりて消ゆ

    初鏡ぐっと背筋を伸ばすむばら

         コーヒーは淡く仕立てる春の雪


         浜大根花は小さい辛抱人


         参道に雉あらわれて杉に消ゆ

         野水仙無心のままがよかりけり

         旅に会い旅に別れし人霞む

  
         フリージャの花より甘き猫の恋


     
         滝に来て滝に合掌しておりぬ


         緋のカンナ優しき人にやさしき目


         生き烏賊を糸造りする男の手

      
         草餅に芭蕉流離の味がする


         十二月望遠鏡の中にいる


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