金 子 兜 太
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成井恵子評論
句集の森『火輪』成井恵子
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帯より 金子兜太
黒い、しっかりした線描の、情熱的ともいえる映像が
印象に残る。そして、多彩で雑多なこの世、そこでの
自身の日常が、批評もろとも滲んでくる。
感性のまにまに哀歓する女性俳句の多い昨今、これ
は意志的な硬派の句群。
自選十句抄
初夢の髪へ朱鷺いろ加へた火事
白い絵具足りないどんどん雪が降る
山焼きに罠を焼かれてとしまひけり
虫這ってゆく地平はどこも蒼く瞬く
波布眠る闇と石筍伸びる闇
落雷の直後の受話器鳥が鳴く
蛍籠梁の上には父の闇
しなやかに鰯雲まで棒高跳び
検体のやう眠り穂芒のやう起きる
火の章へ遺はす形代大祓
神域
天に碧殖やす雲雀の揚がり行く
末黒野を渉りて笛を売りに来る
卒業を曳きずって行く紺袴
赤道
横浜
ふらんす山へ首夏へ百段のぼりゆく
郭公や港の見える丘の木椅子
太陽に石鹸の泡花アカシヤ
濁流
山彦も猪狩の日を告げてゆく
火事手伝ひ地梨のいびつ跨ぎ来る
名を黒鷲すこし狂気の秋茄子
轍跡
桐の実枯れ石に近づいてゆく肉体
氷まくら師走の音を高くせよ
何か告げよ枕の真新しき氷達
吟遊
墓堀の背へオーロラの欅若葉
ゆるやかな爆音通る灸花
天衣無縫赤松林に懸かる海霧
転生
漆黒を渉る狐火あれは母
人の掌を擦り抜ける術猫じゃらし
秋刀魚喰ふ左の目には映らぬ波
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