金 子 兜 太
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句集の森
『
山内 崇弘
』
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俳句作家精選アンソロジー・
山内 崇弘
(やまうち たかひろ)
昭和31年、愛媛県生まれ。昭和58年「虎杖」入会、相原左義長代表に師事
平成4年「海程」入会、金子兜太主宰に師事。
現代俳句協会会員。愛媛県俳句協会理事。
「・・・・・おいおい」 山内崇弘
二〇〇一年三月十九日、ものすごく揺れる車の中にいた。誰かが何かを叫んでいる。「住所は?」「名前は?」「生年月日は?」 いちいち「うざい」質問ばかりするな、と思った。やがて、大きな病院に着いた。がやがやと人が集まり、やがて治療室に運ばれていった。
るんるん気分で自転車を漕いでいた。自家用車を買ったのだ。印鑑証明を取りに行かなくちゃ。車一台がやっと通れるような狭い道路から軽自動車が猛スピードで飛び出してきた。なんなく俺は宙を舞っていた。
左足内踵骨折、頭蓋骨骨折、全身打撲。大したことないようだ。廊下で台車に乗せられ、何時間も荷物のように放置された。やがて、一人の看護師から病室が一杯で入院できない、だから帰ってくれと言われた。……おいおい。
現在、足は癒え、頭蓋骨はくっついたようだ。顔は歪んでいるが。ただ一つ問題があった。こオイが消えた。ニオイの神経が切れてしまったのだそうだ。そこから今ひとつ俳句に集中できないでいる。
この五月、長女が結婚をしたいと言い出した。.おいおい……。
で、俺は何をすればいいのだ? 相手の親はどう思っているのだ? まったくどう対処すればいいのかさっぱりわからない。右往左往している。そんな歳になったのかという思いが強い。
この度、相原左義長先生からお話をいただき、そんなに発表するほどの俳句の数があるかどうかというのがいささか心配ではあったが、この辺で「気合い。いっぱあつ!」 である。
ガキ大将坊主頭に天花粉
雑草から舟虫出でしこと不思議
秋蝶や協調性のない奴ら
新造船色のなきまま十二月
春立つとメトロノームのねじを巻く
凧糸のもつれて熱き部屋となる
鼻の頭擦ってみれば冬の匂い
日矢われに鴎のあばらまで透ける
冷奴ぐちゃぐちゃにして整理つかず
神々のあくびだ虎落笛止まぬ
やさしさなんてけなしことばさ蜂生まる
牛蛙向こうの岸に後悔あり
枯葉みな風の形を見せつける
蠅生まる自分勝手な奴ばかり
汗だくの吾子の頭を熱愛す
真夏日の電動工具蹴り上げろ
風邪の子に額くっつけて星拾う
なずな振る長女はこわれやすきもの
思いきり愚痴吐くために亀浮上
枯芝を父の背中のように踏む
柩打つ石に鶺鴒が止まるよ
流星群眼鏡に傷を残すかな
れんげ野や大の字に寝て発酵す
迷路から抜け出すための朝寝かな
長男が岩魚となって潜みおり
馬の眼の遙か遠くに五月雨るる
潮溜まり愁思ぼっかり浮いている
筋肉のぶち切れる音釣瓶落とし
タオル職人目白鳴かせているばかり
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