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卵の会(らんのかい) 現代俳句同人誌
発行所 四日市市八千代台1-1-139 伊丹方
卵の会」事務局 yoichi9356@gmail.com
誌代 1,000円
作品1 通信句会投句5句・前月号より選5句
作品2 卵々集 5句~10句
作品3 その他特別作品 20日締め
参加費 月額 1,000円(誌代込み)、6ヶ月前納
振替 ゆうちょ銀行・四日市西支店
00840-2-120246 伊丹健秀
ホームページ「卵の会

2010年2月 現代俳句同人誌 卵 の 会 第106号
今月の推薦句 白井 重之選
こがらしの中にわたしの駅がある 岩井 蘇翠
独り言やたらに多き冬日かな 松井 政典
いつからかすうっと運ばれてきて卒寿 徳永 義子
人体に似たる大根に躊躇いて 湯浅真理子
にわとりが空をとんだよお元日 渡辺 淳子
今月の高点句
生業のバイク出てゆく三日かな 間瀬奈津子
ひとつ家にふたつの余生年用意 首藤 明弘
みんなが言ふから正月だと思ふ 青木喜美子
待つことに馴れ水仙を活けている 根津 洋子
こがらしの中にわたしの駅がある 岩井 蘇翠
水仙を束ね海鳴りの底にいる 伊串たき子
枯山河ご飯ふっくら炊き上る 夫馬瑳衣子
信じられる空がある裸木たち 増田 天志
銀杏落葉餓鬼大将は女の子 松田 英子
煮凝の中まで家族の絆かな 園 眞智子
哲学はレモンの輪切りから始まる 瀬戸優理子
特別作品 神隠し 増田 天志
津軽の乙女よピンク似合う雪
寒月や鬼神降るかに日本海
半島は子宮の形や桜桃忌
雪原にふっと失速カモメかな
北斗星猟師は息を殺したる
短夜は隕石吐き出す仁王像
雪しぐれ皇帝という酒場あり
自爆テロ冬たんぽぽ光るかな
敦盛の笛など所望オリオン座
斥候や或る朝ひとつ寒椿
さいはての岬に立てり雪だるま
冬霧は小石集める橋渡し
焼餅や声にならない声を出す
カシオペアでゆく函館は淡き雪
鳥帰る村一村の神隠し
海賊船を見た少年の黄水仙
儀式として髭を剃る帰り花
おぼろ夜や尻尾の骨は溶けてゆく
選句結果・抜粋
いつからかすうっと運ばれてきて卒寿 徳永 義子
重 佳句。
鴣 同感です。私も主人も知らない内に年を運ばれて了いました。
康 この句も実感そのもの。いい句と思います。
優 こんなふうに年を重ねて、老いを受け入れていけたら素敵
です。誕生日ごとに年齢なんか数えているうちは、まだま
だ未熟ということ。
和 この年のとり方、透明感がいいなあ。
鑑賞の広場・抜粋 間瀬奈津子
発信・中村日赤 ———— 北川 邦陽
*この世ではコスモス風に折れたりしない
この世では、つまり死ぬまでは、風に吹かれても吹かれ
ても決してくずおれないコスモス・・・それは病を抱え
ている現在の邦陽さん自身と同じ意志をもつものであ
ろう。普通のコスモスの写生とはまったく趣が違う。
*てふてふはミノムシ科ちちよちちよと舞ひ
もはや弱ってしまった秋の蝶、ふらふらと、てふてふと
舞う様は哀れ。
ミノムシと同族なのだろう、自分を捨てていって帰って
こない父親を呼び、「ちちよちちよ」と声にもならず泣
き舞うばかり。「枕草子」にある「蓑虫」に繋げなければ
「ちちよちちよ」の哀れさは出てこないという点で、技巧
に傾いたかとは思う。だがこの「てふてふ」も人間北川邦
陽の一側面であろうと察する。
私にもっとも難解なのは冒頭の句である。難解ゆえにあ
えて取り上げてみよう。
*秋はわいわい目ん玉つついてさえいれば
まず「目ん玉」は何だ?誰の、何の、「目ん玉」だ?と
いう次元で早くも躓く。いかようにも想像は広がるが、
私の解釈はこうだ。
集いである。仲間、親戚家族一同、あるいは秋の祭りの
親睦会であるかもしれない。わいわい、がやがやと集
まって陽気だ。お膳に乗った鯛か鰤か、何か大きな魚の
目玉を、旨い旨いとつついている。こうしている限り、
人の世の憂いなど忘れられる。もちろんあの世のことな
ども。末尾の「さえいれば」というフレーズが重要な
キーである。
*ペーパーナイフ囲繞病院枯木立
「囲繞」は難しい言葉だが、とりあえず敷地で囲った
(あるいは敷地を垣根や塀や囲った)大きな病院とし
よう。「囲繞」という言葉には、世間と隔絶された
感覚がそれとなく感じられる。
そこの枯木立に「ペーパーナイフ」の比喩を置いたの
は見事だ。鋭くはあるが鋭過ぎず、冷たくはあるが
冷た過ぎない世界として、この入院をとらえること
が出来る。
*数え日の個室へ飛行機雲曳いて
*メイフラワー号数え日トイレ清掃中
「飛行機雲」などとまるで子供がはしゃいでいるような
書き方。病棟を船(百二人のピルグリムファーザーズを
乗せてアメリカに渡ったメイフラワー号)に喩えて、
これも一見楽しそうにさえ見える。
*雲の間の私そろそろ冬雲雀
これが唯一昇天をイメージした句である。なのに深刻さ
を感じさせず、むしろ明るくさへある。俳句が、修練や
技巧を超えて作者の人格を反映するとすれば、まさにこ
の句がそれである。邦陽さんの強靭な精神力が潜んでい
ると言ってよい。
末尾の句、
*TSー1(てぃえすわん)飲んで病院柚子湯せり
(「TS‐1」は内服抗がん剤)に来て病名が分かる。
そして、柚子湯に浸っている邦陽さん。我々をしばし、
ほっとさせてくれる。いつまでもみんなでそっと見守
りたいと思う。
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